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補聴器のしくみ

タイトル
各社カタログに記載されるアルファベットや記号で表記を知っていただくため、代表的なものを御説明いたします。
AGC-I  
  入力した音の大きさから出力を自動調整。  

 

普段はなかなか気がつきませんが、人間の耳は環境に応じて、また注意をした物に対して耳の感度をコントロールしています。騒がしい場所では始めはうるさく感じますが、しばらくするとその音の大きさが気にならなくなります。一方静かな場所で「耳をすます」と、いつもならば聞こえない時計の秒針の音を聞き取ることができます。

これは内耳にある感度調整機能のためで、環境の変化や特定の物に注意を向けると、耳の感度を鋭敏にする、緩慢にするといった調整を取っているのです。そしてこれは耳が持つダイナミックレンジ(聞く事ができる一番小さな音から、うるさいと感じる音の大きさの幅)を拡張しています。

この内耳に問題が生じると、この感度調整の働きが低下したり、失われたりしてしまうことがあります。この結果、小さな音はなかなか聞こえないのに、大きな音はすぐにうるさく感じるという「補充現象」が生じ、耳のダイナミックレンジが狭小化します。

こうした耳で通常の増幅(リニア増幅)を行う補聴器を使用すると、小さい音はよく聞こえず、大きな音が頭に響いてしまい、適切な効果が得られないばかりではなく、装用すること自体困難となることも。

 

リニア増幅を行った場合

小さい音(30)

増幅量(50)
 聞こえる大きさ(80)

大きい音(100)

増幅量(50)
 聞こえる大きさ(150)

()内の数字は説明のためのもので、音圧や聴力レベルとは異なります。

小さな音の時は良いのですが、大きな音が入力されても増幅量が変わらないため、出力される音が大きくなり過ぎることが。

 

AGC-I(Auto Gain Control - Input)は低下もしくは失われた内耳の感度調整機能を補うことを目的に開発されました。AGC-Iはマイクに音が入力された際、その音の大きさを監視し、その大きさにより増幅量を調整しています。

その設定の方法は各メーカーで様々ですが、基本的には会話をする際の音の大きさを基準に、それより小さい音の時には増幅を増やし、会話以上に大きな音が入力された時には増幅量を抑えるという働きを行います。

 

ノンリニア増幅(AGC-I)

小さい音(30)

増幅量(70)
 聞こえる大きさ(100)

大きい音(100)

増幅量(20)
 聞こえる大きさ(120)

()内の数字は説明のためのもので、音圧や聴力レベルとは異なります。

小さな時は増幅量を大きく、大きな音が入った場合には増幅量を小さくするというように、入力される音の大きさにより増幅量を変化させることで、補充現象により狭小化したダイナミックレンジに適合させます。

 

増幅を抑えるということに加え、出力される音を歪ませないということも、AGC-I回路の利点となります。出力制限の方法を、最大出力制限装置(MPO)と比較してみましょう。

大きな音が入力された際、アンプで増幅され出力された音が過大となった場合は、耳を守り、装用感を損なわないため、それを抑制する必要があります。

最大出力制限装置(MPO)は波形を切り取ることで、出力の制限を行いますが、原理上出力される音が歪んでしまいます。

一方AGC-I回路を持つ補聴器では、波形を歪ませず、振幅を圧縮することで増幅量を抑制するため、出力される音は歪みません。AGC-Iで抑え切れない過大な音は、MPOとの組み合わせで対処するという機種が増えています。

ダイナミックレンジへの適合という目的に加え、多様化する使用環境に補聴器をより積極的に対応させるため、このAGC-Iを利用するケースもあります。

AGC-I回路を持ち、増幅量を適宜調整するタイプの補聴器を「ノンリニア補聴器」と呼び、一方増幅量が固定された補聴器は「リニア補聴器」と呼ばれます。これらはどちらが優れているというのではなく、耳の状態、使う環境に応じ選択を行う必要があります。

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